理念・方針

科学的な根拠の存在する心理療法を軸に、精神科臨床を実践する

  1. 来院された皆さまが、「自分が安心で安全な場所にいる」と感じられるようになることを、第一目標とします。安全な場所に抱えられてゆったりと過ごせるときに、人のこころは自然に回復に向かっていくからです。

  2. 精神的な症状は、体(脳)と周囲の環境の相互作用によって起こります。明らかに体調に異常が生じている場合には、薬物療法のような体に働きかけるアプローチを優先します。虐待やDV、パワハラのような環境に巻き込まれている場合には、そのような問題から逃れるようなお手伝いをすることを、大切に考えます。

  3. 苦しい状況に長期間巻き込まれてしまった場合に、人はその場を耐え忍ぶための独特な心や体の反応のパターン(スキーマ)を、作り上げることがあります。自分に身についたパターンを知ることが、回復に重要な場合も存在します。

  4. 家族や地域、会社や学校などとの連携を重視します。人間は一人で生きていくことはできません。本当に安心・安全で、自分を表現できるような生き方は、周囲の人とともに作り上げていくものだからです。

 
 
休んだ方が良い人には、休養をすすめます。
もっと活発に人と会ったり、運動した方がよい方には、一緒にその方法を考えます。
環境を変える方がよい場合には、そのように相談します。
人間関係が一番の悩みならば、そのことについて一緒にじっくりと考えます。
お薬を飲んだ方がよい場合には、ちょうど良い薬の種類と量を提案します。
「ほりメンタルクリニック」は、あなたの気持ちが弱った時に、力になれる、お医者さんです

 

あなたのお話をよく聞いて対応方法を提案します

 
「安心して、自分の弱いところを見せられる場所」を目指しています。
そのために、相談の秘密は守ります。しっかりとお話をうかがい、対応するための提案を行います。その上で相談しながら、方針を決定します。
 

*必要な場合には、行政や地域の他の医療・保健・福祉・介護等の機関と連携して対応します。


こころを回復させる5つの要因

 
次の5つの要因が整っていると、心が回復していくと考えられます
回復が思わしくない場合、妨げる要因が何かを一緒に考え、
取り除いていきましょう

持続エクスポ―ジャー法について

PE(prolonged exposure)療法は、アメリカの心理学者エドナ・フォアらにより開発されたPTSD(外傷後ストレス障害)治療のための認知行動療法プログラムです。 PE療法は、成人のPTSDに対してエビデンスをもつ治療法で『PTSD治療ガイドライン』で推奨されています。

PTSDについて

PTSDは、トラウマとなるような外傷体験が起こった後に発症します。外傷体験とは、自分が危機的状況に陥る、生命を脅かされるような衝撃的な体験をすることです。また、他人の死や負傷を目撃することで発症することもあります。
東日本大震災の被災地では、特に震災後に放射能の問題がクローズアップされることが多かったために、地震や津波がきっかけとなって発症したPTSDへの対策が十分に行われていない傾向があります。当クリニックにも、強い症状を何年も持っていたのにもかかわらず、ずっと治療を受けないでいた方が受診することがあります。
そうなる理由としては、「病気だと思わなかった」「みんな我慢しているので、自分ばかりが弱音を吐くべきではないと思った」「話しても周囲の人に理解されないと思った」と考えていたと、受診された方々は話されています。
しかし、PTSDははっきりとした病気です。放置しておくことで、二次的なうつ病やパニック障害が出現したり、イライラしやすくなって人間関係が悪くなったりします。ある程度強い症状が長期間続いている場合には、治療を受けることをお勧めします。

PTSDの症状

  • トラウマの場面を夢に見る、フラッシュバックするといった再体験症状

単に「思い出す」というよりも、「もう一度体験している」という感じです。夢やフラッシュバックという形で、トラウマの記憶が心に「侵入してくる」感じです。今は安全な心配のない状況なのが分からなくなり、トラウマ体験の渦中にいるような恐怖と不安を感じます。

  • 回避・麻痺

トラウマを思い出せるような物や場所を避けるようになります。それによって短期的には苦痛が減るのですが、長期的には不安なく活動できる幅が狭くなるので、それによる弊害も大きくなります。外側の現実の物や状況ばかりでなく、たとえばトラウマと関係ありそうな自分の中の「感情」「感覚」「考え」などを避けるようになっている場合もあります。その場合は、心の生き生きとした感じが損なわれてしまいます。

  • 覚醒亢進症状

いつでも、心と体が危険に対して身構えているような状態になってしまいます。不眠が一番典型的な症状です。イライラしやすくなる人も少なくありません。このような緊張を和らげるために、アルコールなど薬物の量が増える方もいます。

  • 悲観的な考え方が強くなる

それまで世界や社会に対して抱いていた信頼が希薄になり、信用できない危険なものと感じるようになります。自分や周囲の人の、「善良さ」を信じられなくなることもあります。
トラウマを経験すると、悲観的な考え方が強くなります。自分への信頼が失われることがあります。起きてしまった悲劇的出来事の責任を感じて、自分を責める人も少なくありません。また、自分の能力が足りないと、強く責めるようになることもあります。


 

PTSDの治療法としてのPE(持続エクスポージャー)法

PTSDの症状が強い場合には、治療を受けることをお勧めします
薬物療法だけでは十分に改善しないことが多く、さまざまな精神療法が行われますが、その中で認知行動療法の一つであるPE(持続エクスポージャー)法は、PTSDに対して有効であることを証明する証拠(エビデンス)が、多数ある治療法です。
週に1回、1回90分の治療を、全部で6から15回ほど行います。
ほりメンタルクリニック院長の堀有伸は、このPE法のセラピストの資格を持っておりますので、この治療に興味のある方は是非ご相談ください。

症状へのアプローチ

 一般診療: 病名・症状の説明

「心と体の不調について理解する」

心の問題は多様で、うつ病や不安障害、パニック障害、PTSDなど、さまざまな病名や症状が存在します。一般診療では、患者様が抱える症状について丁寧に説明し、原因や治療方法を一緒に考えます。
 

  • よくある症状: 気分の落ち込み、眠れない、不安が続くなど
  • 治療の進め方: まずは症状や病名について理解していただき、症状の改善を目指します。

 
診療の流れ

  • 初診: 問診と初期評価
  • 治療方針の相談と説明
  • 継続的なサポートと調整

 


 

PSW(精神科ソーシャルワーカー)とともに進める認知行動療法の学び

ここから先の診療については、提供できる枠に限りがあるため、こちらから必要と思われる患者さんに声をかけてお勧めしています。希望者全員に提供できないことを、お許しください。現在はすべて、保険診療の枠組み内で行っています。
1回1時間弱の時間をかけて、認知行動療法のワークブックに取り組み、セルフモニタリング、マインドフルネスなどの技法を学んでいきます。週に1回から4週に1回くらいの頻度で実施しています。
 

「トラウマに向き合うための治療法」
上記の認知行動療法の学びを通じて、相当に改善されている方がおられます。それでも十分な改善がえられない場合に、次の持続エクスポージャー法か、スキーマ療法のどちらかを提案する場合があります。

 

持続エクスポージャー法

持続エクスポージャー法(PE法)は、トラウマ体験に対して徐々に向き合い、不安や恐怖を和らげていく治療法です。安全な環境で体験を再評価し、トラウマの影響を少しずつ軽減することを目指します。
 

  • 適用例: PTSD、強い不安症状
  • 治療の進め方: 少しずつトラウマに向き合いながら、感情の処理をサポートします。

 
治療のステップ

  1. トラウマ体験の確認と同意
  2. 少しずつ安全な環境で再体験
  3. 感情の変化を評価しながら進めます

 


 

スキーマ療法

「根深い考え方や行動パターンにアプローチ」

スキーマ療法は、幼少期から形成された考え方や行動パターン(スキーマ)が現在の心の問題に与える影響を見つめ、改善していく治療法です。
 

  • 適用例: 対人関係の問題、不安や抑うつの原因が深い信念や行動に関連する場合
  • 治療の進め方: 過去の出来事や考え方のパターンを見直し、新しい視点を育てていきます。

 
治療のステップ

  1. スキーマの特定と認識
  2. パターンの再評価と新たな行動の促進
  3. 少しずつポジティブな変化を育成

持続エクスポージャー法やスキーマ療法を実施するべきでない場合について

この二つの治療ではどちらも、過去に経験したトラウマのような、普段の生活で蓋をしてきたようなテーマに向かい合うことが必要になります。
自分の心の一部に蓋をすることには、苦痛を避ける、つらい感情や記憶に向かい合うことで心身の調子が悪くなるという意味があります。
しかし、向き合うことを避けて蓋をし続けることで、自分が無自覚のうちに身につけてしまった心と体の癖(スキーマ)が自動的に反復され、問題がいつまでも持ち越されてしまうことになります。
蓋をしている自分の心の内側に向かい合うことは、容易なことではありません。不用意に行えば、危険です。十分な準備がなされていない場合には、行うべきではありません。
したがって当院では、初歩的な認知行動療法のセッションを十分な回数受けていただいた方に限定して、持続エクスポージャー法やスキーマ療法実施しています。
蓋をしている自分の心の問題と向かい合う場合には、安全第一を方針としています。しっかりと準備する、少しずつ慣らしていくことが原則です。その他にも、ご本人の体調や生活環境などを総合的に考えて、「自分の心と向かい合う」作業に取り組めるだけの条件が整っているかどうかを判断します。条件が整えていない場合には、これらの治療を導入は原則として行わず、他の手段を優先します。必要な場合には、時間が経ってから再度検討します。

スキーマ療法とは

ジェフリー・ヤングによって開発された心理療法で、最初は境界性パーソナリティ障害のある方を対象に、認知行動療法を応用したものでした。現在はその適応はパーソナリティ障害のみならず、遷延したうつ病、PTSD、依存症など広く拡大されています。愛着理論、ゲシュタルト療法、精神分析などの考え方や技法を統合した治療法とされています。期間は1~3年、全部で50~200回程度のセッションを実施することが平均的です。

3つの理論的な柱、①中核的感情欲求、②早期不適応的スキーマ、③スキーマ・モードモデル

中核的感情欲求と早期不適応的スキーマ

中核的感情欲求とは、どんな人間であっても満たされることを求める情緒的な欲求で、スキーマ療法の古典的には5種類に分類します。(1)安全・安心と愛着、(2)有能感、自律性、アイデンティティーの感覚、(3)他者に従属し過ぎないでよいこと、(4)自由で楽しめること、(5)必要な場合には指導され、注意されること。これらが満たされると情緒は成長していきますが、満たされない場合に、その苦しい状況を耐え忍ぶために、人間の心と体には不自然で非機能的な癖・反応のパターンが形成されます。それらを早期不適応的スキーマと呼び、18種類が認定されます。早期不適応的スキーマは、中核的感情欲求が満たされないことを乗り越えるために形成されますが、一旦形成されると、早期不適応的スキーマが自動運転してしまうことで、逆に中核的感情欲求が満たされにくいような環境や人間関係を選んでしまうようになるのです。
18種類の早期不適応的スキーマには、次のようなものがあります。
(1)安全と安心・愛着が損なわれた場合
・見捨てられスキーマ ・不信・虐待スキーマ ・欠陥・恥スキーマ
・情緒的はく奪(分かってもらえない)スキーマ ・孤立スキーマ
(2)有能感、自律性、アイデンティティーの感覚が損なわれた場合
・失敗スキーマ ・無能・依存スキーマ ・巻き込まれスキーマ
・脆弱性(病気や災害がもたらす不条理な影響に逆らえない)スキーマ
(3)他者に従属し過ぎないことのニーズが満たされなかった場合
・服従スキーマ ・自己犠牲スキーマ ・承認や賞賛を求めるスキーマ
(4)自由で楽しめることが損なわれた場合
・否定・悲観スキーマ ・感情抑制スキーマ ・完全主義的べきスキーマ
・罰スキーマ
(5)必要な場合にも注意も指導もされない場合
・俺様/女王様スキーマ ・自分をコントロールできないスキーマ

スキーマ・モードモデル

早期不適応的スキーマは、過去と現在のつながりを考えるものですが、スキーマ・モード・モデルは現在出現している心の状態について、それぞれの方が出現しやすいパターンを把握するために使用する概念です。「批判モード」が自分の中の「傷ついた子どもモード」を攻撃するので、それに介入する「健康な大人モード」を強めることを目指す、といった使い方をします。

スキーマ療法の進展

まずは、自分のなかで活性化しやすい早期不適応的スキーマやモードについて知的に理解します。そして、体験的技法と呼ばれる介入法を用いて、ある種のイメージの書き換えを目指します。また、意識せずに行っていた自分のあり方を苦しくする行動を変更して結果を観察する行動実験を行うことがあります。

スキーマ療法の終結について

治療の最初の方で確認した困りことに対処し、目的を達成できれば終結が話題となります。これは、それぞれの方で様々です。全部で50~200セッション、1~3年間かけて行われます。

診療時間

学会、講義などにより休診とさせていただく場合がありますので、診療カレンダー・お電話にてご確認いただくことをお勧めします。

診療時間
09:00〜12:00 - -
14:00〜17:00 - - - -

※予防接種の予約・変更は一般診療時間内にお電話でお願いします。